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エッセイと希望

■ 学生のころは、むさぼるようにエッセイを読んだ。北杜夫、遠藤周作、山口瞳、池波正太郎、向田邦子、丸谷才一などなど、名エッセイストと謳われた作家のものを次から次へと読んでいきました。高校生や大学生には、大人ってこんなふうに考えたり、見たり、遊んだり、食べたりするんだ、と憧れました。ミステリなんかよりもはるかに読んでました。

■ 週末、「そうだエッセイを読もう」と久々に思い立って、浅田さんの『ま、いっか』(集英社文庫)を手に取りました(実際にはダウンロードしたのですが)。たぶん、度重なるテロの報道に正直心が折れそうになっていたからだと思います。よいエッセイストは、思想的に保守でも革新でも、ものを見る確かな観察眼を持っている。何よりも日常を愛おしむ。先に挙げた人たちも決してリベラルなわけではないし、むしろ保守といってよいが、読ませるし、笑わせるし、泣かせます。そして、希望がある。今の私にはそれが必要でした。

浅田さんのエッセイもまさにそうでした。某航空会社の機内誌では、たまたま読むのですが、まとまったものを読んだのははじめてです。最後の章の「星と口笛」は絶品です。印象に残る文章を2つだけ。

「貧しいながら幸福な青春であった。金銭も愛情も他者からは求めず、みずから生産し管理すること、すなわち自由である。幸福は自由の異名であと、私はこのとき知った」。



「楽しければ笑い、苦しければもっと笑い、どちらでもなければ自然に笑っていればいい。日がな花のように笑い続けて、しかも大地の鉄のごとく根が生えていれば、なおさらいい」。



かくありたい。
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菅野完『日本会議の研究』 (扶桑社新書)

■  著者の菅野さんの綿密な取材によって解く明かされる日本会議の「淵源」と「深淵」には戦慄させられます。「左翼」運動は、50年の時を隔てて、再び負けようとしているのか。

署名・請願・集会・学習会・デモといった民主主義のツールを使って愚直に民主的な活動を続けてきた日本会議の面々が、日本の民主主義を葬り去ろうとしている逆説。それは、ナポレオンやヒトラーの例を挙げるまでもなく、民主主義社会で、「普通に」起こりえることである。「トランプ現象」その1つかもしれない。菅野さんが最後に述べるように、民主主義を守る側も、諦めず愚直に民主主義を貫く以外にないのでしょう。

砂川 浩慶 『安倍官邸とテレビ』 (集英社新書)

■ ここでも、法解釈の「不作法」がまかり通っている。法律解釈の第一は、上位の法とできる限り整合的に解釈すること、つまり憲法適合的に解釈することでしょう。放送法の解釈もまた、憲法21条の表現の自由の規定と適合的に解釈されねばなりません。とすれば、放送法4条は「倫理規定」として読むべきだし、ましてや、放送内容に基づいて放送免許の交付を拒否するようなことは許されません。そのようなことが許されるとすれば、放送法そのものが違憲の法律となります。

現職の総務大臣は、そもそも法令の文言すら無視します。唖然とします。テレビ局に対して「業務停止」「停波」をちらつかせて恫喝するのは、言語道断です。そもそも、地上波の放送局は、業務停止の規定の適用除外とされています。無知とは恐ろしい。いや彼女の場合は、確信犯か。

甘くない話しと現実

■ 宮部みゆきさんの『ペテロの葬列』を読み終える。結末は甘くない。並行して読んでいた平田オリザさんの『下り坂をそろそろ下りる』も、読み終える。これもまた甘くない。しかし、この2つに共通しているのは、甘くない現実に向き合い、この寂しさに耐えながらも、決して希望を捨てない。この姿勢です。

■  平田さんの主張は、次の点に尽きます。「おそらく、いま日本と日本人にとって、もっとも大事なことは、『卑屈などのリアリズム』をもって現実を認識し、ここから長く続く後退戦を『勝てないまでも負けない』ようにもっていくことであろう」。この一文は、少子化にあえぐ「大学」という存在にも当てはまるでしょう。平田さんが、この本において、桜美林大学や四国学院大学の実践を紹介していることからもわかります。

私たちがリアルに認識しなければならない点は3つ。(1)もはや日本は、工業立国ではない。(2)もはや日本は、成長社会ではない。(3)もやは日本は、アジア唯一の先進国ではない。まず、私たちはこの寂しさに耐えなければならない。そして、この認識に基づいてどうすべきか。キーワードは「文化」です。とくに地方における文化的な資源を育てていくこと。その先にある日本の姿は、「競争と排除の論理から抜け出し、寛容と包摂の社会」ということになるでしょう。私も、大切なビジョンだと思います。

アリと人間

■ 丸山宗利先生の『昆虫はすごい』(光文社新書)は、虫嫌いの人にも是非読んで欲しい本です。蟻の社会は、まさに人間社会の縮図。進化の歴史を考えれば、逆かもしれませんが。社会性とは、昆虫学の定義では、階層・階級のある集団生活を意味するようです。女王蟻と働き蟻のように。一部の種では、蟻の「身分制」には、働き蟻以下の「奴隷」も存在すると言います。そして、同種の蟻の間でも熾烈な戦争があり、その戦いは、殲滅戦となるほど熾烈なようです。

■ 昆虫の社会の身分制も奴隷制も戦争も、種の保存という目的から、気の遠くなるような長い時間をかけての、突然変異と自然淘汰を経た結果です。いわば、自然のなせる技です。さて、人間社会はどうか。どう見ても、自然の摂理からはるか遠いところに来ているように思えます。それは、人間が「知恵の実」を食べたからか。しかし、「知恵」「理性」という言葉が空しく聞こえる世界に、私たちはいます。それでも、「人を信じたい」と言い続けたい。やせ我慢は、たぶん、人間だけのものだから。
プロフィール

dokuich

Author:dokuich
■ ひっそりと本を読んで世の中について考えてみる。「憲文録」は、もともとは大学で憲法の私の講義を受けている学生との連絡用のHPから出発。学生たちにもっと本を読んでほしいな、というお節介から「別冊」が生まれる。休眠期間を経て、今回、「別冊・読書日記」として再出発する。

■ ミステリとバーボンとワインをこよなく愛し、札幌ドームに足繁く通いビールを飲むのを趣味とする。もちろんファイターズも応援する。

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